ふるいの森

「あれはもう禁じられた遊びだ」
バンジージャンプを翌日にひかえた祖母が祖父との馴れ初めを孫の私に語ってくれた。
「近在の村から若い衆を３０人ばかし、ふるいの森に集めてな、樹の上から順番に落っことして、最初の網にかかったのはそれで終わり。村にけえす。その網抜けてきたのをまた落っことして、次の網にかかったのも村にけえす。残ったのが５人ばかしいて、そこからはゆるい坂をひとりずつ転がして、途中の穴ぼこに落ちねえようにうめえことやったのはまた次の坂に転がして、上からでっけえ石さ追っかけてくっから、それよけながらたどり着いた橋で飛び降りるのさ。そこまで無事なのはふたりぐれいで、これが本当に最後の最後、飛んだ先にはまた網があって、うめえことそれを抜けたら、河原の掘っ建て小屋の寝所に落ちて、そこにオラが寝てるって寸法なのさ」
１００歳を迎える祖母が祝いのバンジージャンプを飛ぶ。
無事でいてね。大好きだよ。