皺だらけのじゃんけん

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饅頭があとひとつ。
母はお盆をこちらへ寄越した。
「ええよ、あんたが食べ」
「いや、お母さんが食べな。好きでしょこれ」
私はお盆を押し戻した。
いやいや、と母はまた押し返し、いいっていいって、と私も突き返す。
そしてあーだこーだ言い合う最中、母の右拳が握られた。
それを見て、私は黙って正座した。
戦いが始まる。

「じゃんけんぽん!」
負けた。

揉め事はじゃんけんで解決するのがうちのルール。いまや皺だらけのこの手に、何度も負かされてきた。私は饅頭を手に文句を垂れる。
「お母さんほんとじゃんけん強いよね。昔からさ」
「いや、そんなことないやろ。あんたの方が強かった」
母はお茶をすすりながら反論した。
いやいや嘘。
ホントやって。

不毛な議論の最中、父がやってきた。
「お父さんさ、私とお母さんどっちがじゃんけん強い?」
父は顎を触りながら、ぼそっと答えた。

「どっちも負けず嫌いやな」
その他
公開:20/05/23 01:06
更新:20/05/24 04:56
親子 仲良し 超ショートショート講座

空岸なし

読んでくださりありがとうございます!たまに更新したりしたいなと思ったりしたりしています。https://mobile.twitter.com/sorakky0

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