がらんどうの神様

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木のうろには神が住む。言い伝えは知っていたが、実際お目に掛ろうとは思わなかった。

木に開いたうろ穴の大きいものを、がらんどうと呼ぶ。がらんは伽藍、すなわち寺院を指す。伽藍神(がらんじん)という寺院を守護する神様がいて、伽藍神をまつるお堂が伽藍堂(がらんどう)なのだそうだ。
大きな穴は木にとって厄介なはずだが、上手くバランスを取って共存している。そのまま平気で立っていられるのは、がらんどうに住む伽藍神が、木を守るからだという。あくまで言い伝え、実際お目に掛ろうとは思わなかったし、ましてや
「願いを言え」
などと要求されようとは。
たまたま見付けて覗いた。参拝のつもりはなかった。
「願いを」
喋る以外は普通にリスだ。守るというより、住んでいるだけに見える。
「その木を守って下さい」
倒れると危ないから。適当に答えたら、
「殊勝なり!」
厳かな声と共に、穴に溜め込んだらしきクルミが降ってきた。
ファンタジー
公開:20/05/22 23:58

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

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