二枚の表彰状

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 会社勤めをしてきて30年の永年勤続表彰を受けた。帰宅後、その表彰状を見て、ひどく薄っぺらなものに感じた。自分もそこそこの実績を上げてきた。その報いがこの紙なのかと思った。
 それは、オンデマンドの可変印刷でプリントされた素っ気ないものだった。

 ふと、思い出したことがあり押し入れから紙筒を出してきた。
 中は、入社5年目に初めてもらった永年勤続の表彰状だった。
 見比べてみて、なんだ、この違いは、と声が出た。

 時代が違うと言えばそれまでだが、5年目の表彰状は、厚手のクリームケントの賞状用紙に鳳凰と桐の枠が金付けでほどこされ、地の文は凸版で印刷され、名前は毛筆で書かれていた。
 その当時のようやく一人前と認められた頃の記憶がわき上がってくる。

 一方でもう一つの思いもわいてきた。

 それは、定年退職後の生き方を模索するなか、今後は何か手作りの仕事をしようということだった。
その他
公開:20/05/23 18:16

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