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舞香が、明と付き合い始めた。俺達三人は幼なじみだ。
「誠も一緒に行こ」
舞香は明と三人で祭りに行こうと言っている。もともと昨年までは三人で行っていたが、さすがに今年はふたりの邪魔をするような無粋なマネはしたくない。
「行かない。お前らふたりで行け」
「誠、最近冷たい」
舞香は頬を膨らませる。彼女は椅子に座っている俺に顔を近づけると、まっすぐに見つめてきた。白い頬に色素の薄い茶色の髪が揺れる。
「さっさと帰れ」
「冷たい」
眉根をひそめて不満げな舞香を押しのける。シャンプーの甘い香り。
「明、連れてけ」
「おう」
誰もいなくなった教室でひとり思い出す。浴衣姿の細くて頼りないうなじ。
ぬるい風が窓から入ってくる。
「まこと、おとなになったらふたりでこようね」
十二年前、明がたこ焼きを買いに行った隙に交わした、俺との秘密の約束。だけど、舞香は明の彼女になった。
祭りになんか、二度と行くものか。
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公開:20/05/23 17:44
更新:20/05/23 23:20

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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