オカルト資産

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 僕は曽祖父について何も知らなかった。
 存命だったことも、魔法使いだったことも、親族が僕しかいなかったことも。
 唯一の相続人として案内された邸宅は、古城として扱うべき広さと古さで、そうでなくても独り住まいできる代物じゃなかった。初日から食器と火の玉が飛び交った。壁に浮き出たドス黒い魔法陣から目のない老婆が現れ、引っ越しの挨拶が無いと僕を詰った。
 翌日からは目の数や手の数が不揃いな弔問客たちが次々と訪れ、曽祖父の死を悼んでいった。流した涙でカーペットが溶け悲痛な泣き声でガラスが割れた。せめて僕の葬式を出さないよう、必死で乗り切るしかなかったよ。
 すぐに逃げ出した。もうウンザリだ。あんなオカルト生活を引き受けてたまるか。
 どうやって振り切ったのかって?
 たぶん曽祖父もよく使ったもののおかげ。
 向こうが魔法ならこっちは民法だけどね。
 つまりホウキだよ。相続放棄。
公開:20/05/22 06:26
更新:20/12/11 20:17

佐賀砂有信( お前の後ろ )

さがすな ありのぶ です。
グラインドコアとサメ映画が好きです。

長めのやつ
https://kakuyomu.jp/works/1177354054880370626

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