疣顔村

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某県✕市、郷土史の文献。御願巳(うがみ)と言う地域の集落についての記録。興味深かったのは一帯に伝わる民話であった。要約するとこの様な話である。
村の小作人夫婦に一人娘がいた。年頃になり誰もが振り返るような美人に育つ。ある年小作料を捻出できない程の不作となり、その時寡男であった地主から、小作料の代わりに娘を寄越すよう持ちかけられる。夫婦は泣く泣く娘を嫁に出す事にした。娘は既に恋仲の相手が居たが、両親の為に地主の元へ嫁いだ。

数年経ち、夫婦が地主へ小作料を納めに行くと、“流行り病に罹っている”と言う事で娘に会わせて貰えなかった。更に数ヶ月。村沿いを流れる川下で、折檻され顔中を腫らし娘が死んでいたという─。

資料館の館長が一枚の写真を見せてくれた。変哲無い家族の集合写真。だがひとつ奇妙な点があった。全員の、顔。

“きっと祟られたんでしょうね” そう言って館長は、顔にある大きな疣をさすった。
ホラー
公開:20/05/22 05:48
更新:20/05/22 16:21
怪談

蛇野鮫弌( ビリヤニがたべたい )

蛇野鮫弌 (はみの こういち)

一日一作を目標に。あくまで目標……

道草食いつつ逝きましょか。

Twitter @haminokouichi

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