バラ売りしょうねん

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昔、薔薇売りの少年がいました。少年は祖母が育てた薔薇のトゲを削ぎ、街で売っていました。少年には祖母以外の血縁者がおらず、祖母とふたりで生きるため、必死で薔薇を売りました。しかし、人々は少年に目もくれません。少年は貧しいまま青年になり、娼年になりました。

娼年になったことで、毎日食事ができるようになりました。娼年は、生まれてはじめて、幸せを感じました。

ですがそれも長く続きません。

祖母が大きな病で倒れたのです。娼年は嘆き悲しみ、祖母を救おうとしました。そこで娼年はひとつの考えにたどり着きます。自身を売ればいいじゃないか、と。それは文字通り体を売る、ということでした。

腎臓、目、指、足。トゲを削ぎ落とすように体を売り、ついには、売れるものが無くなりました。お金は足りず、祖母は亡くなりました。

皮肉にも、この話は美談として今でも語り継がれているのです。トゲを削がれた薔薇のように。
ファンタジー
公開:20/05/22 00:11

矢原こはる

ふだんはnoteで活動しています。
noteには出せないけどTwitterだともったいない、くらいの軽めの小説です。
 

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