不思議な花瓶。

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 幼き日。母から「そのまま飾っておきなさい」という言葉とともに花瓶を貰った。


 あれから、八年が経った。花瓶はそのままま、窓辺に飾られている。
 
 少しして、花瓶に変化が訪れた。
 それは、彼に出会った日のこと。花瓶には、ひっそりと月光に照らされるポピー。

 三ヶ月ほど、花瓶を彩ったのは、リナリアだった。

 晴れて、彼とお付き合いを始めた日は、赤のチューリップ。


 初めて喧嘩した日。花瓶では、アリウムがなんだか寂しそうにしていた。



 何もしていないのに、次々に花で彩られる花瓶。美しいと思いつつも、なんだか不思議というか不気味というか…。
 ある日、咲いた花たちの花言葉を調べてみた。すると、あることに気づく。
 花瓶は、私の“心”を咲かせていたのだ。



 ずっと、一緒に。そう誓って、純白のベールに包まれる日の朝。花瓶では、青のヒヤシンスが誇らしげに咲いていた。
その他
公開:20/05/21 23:26
更新:20/12/22 16:05
記念すべき70作目

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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