星描きの夢

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「絵描きになりたかった」
緑のキャンバスに佇み、黒い団子が呟く。
「奴らはアーティストの称号を得ている。なのに俺は迷惑扱いだ」
キャンバスには、団子の描いた痕跡が無数に散る。そういう問題ではないのだが、『私には一緒だ』と言ったところで、奴を納得させる事も、描くのを止めさせる事も出来まい。結局は本能なのだ。
「なぜ俺は絵描きではないのか」
身体を丸めた団子は、ピンボールの様に自らの痕跡を転がり、緑の影へ消えた。
「お前はお前で良いと思う」
あながち世辞でもない。透かし仰ぐ痕跡は、煌めく星にも見えた。
キャンバスをかき分ける――緑が視界に広がり、私は奴のアトリエにいた。葉漏れ陽のプラネタリウムから光の筋が降り注ぐ。
「ほら、十分にアートだ」
「いいや、俺もあんな絵を描きたい」
団子虫の短い足が、わさわさ示す側面には、絵描き虫が羽化前に食い遺した、400分の1の葉壁画『最後の晩餐』が輝いていた。
ファンタジー
公開:20/05/21 22:36
ダンゴムシとエカキムシ どっちも食害だよ……。 書いていて痒くなってきたので、 害虫シリーズはここまで。 苦手な方々、失礼いたしました。

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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