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「絵描きになりたかった」
緑のキャンバスに佇み、黒い団子が呟く。
「奴らはアーティストの称号を得ている。なのに俺は迷惑扱いだ」
キャンバスには、団子の描いた痕跡が無数に散る。そういう問題ではないのだが、『私には一緒だ』と言ったところで、奴を納得させる事も、描くのを止めさせる事も出来まい。結局は本能なのだ。
「なぜ俺は絵描きではないのか」
身体を丸めた団子は、ピンボールの様に自らの痕跡を転がり、緑の影へ消えた。
「お前はお前で良いと思う」
あながち世辞でもない。透かし仰ぐ痕跡は、煌めく星にも見えた。
キャンバスをかき分ける――緑が視界に広がり、私は奴のアトリエにいた。葉漏れ陽のプラネタリウムから光の筋が降り注ぐ。
「ほら、十分にアートだ」
「いいや、俺もあんな絵を描きたい」
団子虫の短い足が、わさわさ示す側面には、絵描き虫が羽化前に食い遺した、400分の1の葉壁画『最後の晩餐』が輝いていた。
緑のキャンバスに佇み、黒い団子が呟く。
「奴らはアーティストの称号を得ている。なのに俺は迷惑扱いだ」
キャンバスには、団子の描いた痕跡が無数に散る。そういう問題ではないのだが、『私には一緒だ』と言ったところで、奴を納得させる事も、描くのを止めさせる事も出来まい。結局は本能なのだ。
「なぜ俺は絵描きではないのか」
身体を丸めた団子は、ピンボールの様に自らの痕跡を転がり、緑の影へ消えた。
「お前はお前で良いと思う」
あながち世辞でもない。透かし仰ぐ痕跡は、煌めく星にも見えた。
キャンバスをかき分ける――緑が視界に広がり、私は奴のアトリエにいた。葉漏れ陽のプラネタリウムから光の筋が降り注ぐ。
「ほら、十分にアートだ」
「いいや、俺もあんな絵を描きたい」
団子虫の短い足が、わさわさ示す側面には、絵描き虫が羽化前に食い遺した、400分の1の葉壁画『最後の晩餐』が輝いていた。
ファンタジー
公開:20/05/21 22:36
ダンゴムシとエカキムシ
どっちも食害だよ……。
書いていて痒くなってきたので、
害虫シリーズはここまで。
苦手な方々、失礼いたしました。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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