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以前勤めていた山裾にある特養に、大石さんという天涯孤独の男性入居者がいた。
体動も意思表示も不可能な為、職員による全介助だったが、その名の通り大きく硬い体で、体位交換には苦労した。
そんな冬のある夜、いつもの様に寝ていた体を傾けようとすると、その下から一匹のシマヘビが僕の前に這い出てきた。翌日からも同様の事が他職員にも起きた為、話し合う事となり、その結果ひとつの答えが導き出された。
昨今、山で開発が進み多くの石も除去されている。その為、冬眠する場所を失った蛇が石の様な体の下に潜り込むのでは…というものだった。
それから大石さんの体交は冬の間、側臥位だけで行う事となった。だが誤って仰臥位にしたある夜、僕は不思議な蛇を見た。
それは外の雪の様に白い蛇だった…。

あれから十数年経ち、その山にはいつからか、人が仰向けで寝た形の大きな石が現れた。そして冬になると、たくさんの蛇がその下で眠るという。
ファンタジー
公開:20/05/22 17:49
更新:20/05/23 06:09

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