透きとおる祈り

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深い森を切り裂いて通した一本の道がまっすぐに北へ向かって伸びている。
5月の青は空も海も本番直前の本気さで、森や雲や風と指揮を振る太陽に心をあわせて謳っているようだ。
私は一本道を影でなぞるように上空を凧で飛んでいる。
両手両足を広げたまま空を飛ぶ気持ちがわかりますか。首をうなだれてはいけない。うなだれては神になってしまう。それだけはいけない。この布はただの凧で十字架ではないのだから。
私は空で心の透祈をしている。週に二度、汚れた心の水を浄化するために空に身を晒さなければならない。
看護師が運転するワンボックスカーの後部座席には心の透祈医がいて、サンルーフから私を縛りつけた凧を操っている。雨の日も風の日もこの道の上空をまっすぐに。そのことにどんな意味があるのかは知らないけれど、西洋医学の人工透析とは違うわけだから言葉で説明できるものでもない。
すーっとする。ただそれだけの最高が空にはある。
公開:20/05/22 15:55

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