点と点の散歩

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公園を歩いていると、目下に垂れ下がった枝に気づかずそのまま突っ込んでしまった。
コンマ数秒の忘我と、その後すぐに訪れた敵意を以て振り返ると、そこには年も性別も分からぬ老人がぽつねんと立っていた。先程までどこにもいなかったはずの皺に顔が溺れそうな老人は、妙に現実離れした浮遊感を帯びていた。
「ここで、何をしてらっしゃるんですか?」
不意に口から言葉が出た。浮遊しかけた心臓を現実に括ろうとしたのだ。
「何もしていません。ただ、散歩を。」
口元に垂れた皺がそう動いた。
「失礼ですが、先程まではどこにいらっしゃったのですか?」
「先程までは、どこにもいませんでした。ただ、散歩を。」
私は少し焦った。
「そうでしたか。では、私はこれで。」
早く帰りたかった。
「待ちなさい。」
老人が掠れた声で囁いた。
「君は、一体誰だ?」
分からない。
「何故連続性を持つ質問をした?」
私は知らない。
私は、
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その他
公開:20/05/20 21:25

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