三途の川の貧困

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男は貧乏だった。
奨学金で貯金はできず、会社はリストラされ、アパートも追い出された。手元に残っているのは50円玉がほんの6枚。
「ちくしょう、こんな端金でどうしろってんだ。菓子パンひとつで消えちまう」
夏のひどい暑さで、あともう何時間で死ぬだろうと男は悟った。駅前を通ると某色羽募金が行われていた。
男は全財産を入れてから、離れたロータリーにへたりこんだ。
男が目を開けると霧深い川原にいた。
「結局死んじまったのか」
「ええそうですよ」
粗末なボートに乗った船頭は答えた。
「俺は地獄に行くのかい?」
「いえあなたは寄付を行いました。それは良い行いとみなされるでしょう」
「そうか、こんな俺でも天国へ行けるのか。善行をしてよかったぜ。じゃあ、川の向こうまで乗せてくれ」
「どうぞどうぞ。渡り賃は六文(300円)になります」
その他
公開:20/05/20 21:22

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