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放浪の影絵画家として全国を旅する私は今日も路上で作品を売りつつ気になった人に声をかけていた。
影が薄いとお悩みの若者にはその影を濃くしてやる。影を濃くするとそれに比例して光が濃くなる。
人の繋がり濃さと影の濃さも比例するんだ。

それを見ていた青年が声をかけてきた。
「あの…僕にも影を描いてもらえませんか?」
勿論いいですとも。どんな影を描きましょうか?
「面影をお願いします」
青年は早くに父を亡くし、母に女手一つで育てられたという。
やっと自分も働けるようになり、これからは母に恩返ししていこうと誓った矢先、母が過労で倒れたと。
「母は『父に会いたい』と毎日呟いています。どうか、僕に父の面影を描いてください」
私は影筆を執ると青年の顔に影を描いていく。
青年は壮年へと姿を変えた。
「ありがとうございます」
嬉しそうに去っていくその後ろ姿に私は隣に立つ青年によく似た男性の霊と共に手を振った。
公開:20/05/20 19:26

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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