星咲か爺さん

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あるところに、怒ると怖い頑固な爺さんがいました。

爺さんの仕事は、空の掃除をする事です。空気中に漂う塵や水分を、専用の飛行機で取り除く。そうすることで、地上から見える星の輝きは数段素晴らしいものになります。六十年間、爺さんはこの仕事一筋で生きてきました。

しかし、そんな爺さんも寄る年波には勝てません。夏のイベント「天の川祭り」に向けて空の掃除をしている最中、体を壊して倒れてしまいました。残りの作業は唯一の弟子に譲られます。

祭りが始まったその日、爺さんは弟子に伝えます。外に連れて行ってくれ、と。
星空を見たいのだと思い、弟子は爺さんを夜空の下へ背負っていきます。しかし、爺さんは空を見ていませんでした。
その視線は、祭りを訪れた人々に向けられています。みな一様に空を見上げ、キラキラとした笑顔を浮かべています。
「今年も、星は咲いてるな」
爺さんは安心したように笑ったのでした。
ファンタジー
公開:20/05/21 21:48

早見並並( 神奈川県 )

物語創作に興味があります。

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