おちつかない改造人間

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「さっきからどうしたんだ?寒くて震えているのか?」
「いや、違うんだ。こんな時に打ち明けて悪いけど、実は俺、改造人間なんだ」
 彼は自分の体を切り刻んでねじを締める手振りをして見せる。さっきから、落ち着かない様子で手足を動かし続けている。
「身振りや手振り、常に振っていないとおちつかない体にされてしまったんだ」
「難儀な体だな。じっとしてられないってことだろう。俺はてっきり寒いから体を温めているのかと。こんな状況だからな」
 分厚い二重窓の外では吹雪が荒れ狂っている。避難した山小屋に暖炉はあったが、燃やせるものが何もない。毛布を被って寒さに耐えるしかない。
「いいか、ここは雪山だ。小屋の中にいても、氷点下を大きく下回っている」
 彼の反応がない。さっきまで忙しなく動いていたはずなのに。
「寝たふりなんかやめてくれよ。いいか絶対に寝るなよ。寝たら死ぬぞ。いいか、絶対だぞ。絶対に寝るなよ!」
その他
公開:20/05/21 21:10

直見逸

なおみ いつる、です。
ツイッターでは「瀬々幾」と名乗っています。
一日一本を目安に書いていきます。普段は長編とか色々書いています。

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