自由帳漫画

空想が救いだった。

息子は生まれつき体が弱く、医者に夭折を宣告された。
親として何ができるか。
考えても分からないが、息子は自分で道を見つけた。

漫画を描くことが好きだった。
「また自由帳買って」
息子から何度もそう言われた。
描いたものを見せてもらうだけで、小学校でのことが伝わってくる。
「ストーリー考えなくても、そばにいる皆が僕の漫画のキャラクターなんだ。描きたいことは沢山あるよ」
体が辛くても、楽しそうに描いている姿に奇跡を見た。
周りにも感謝したい。
息子が自由帳に漫画をまとめた後、担任の先生が「学級文庫に入れたら」と言って下さり、学校の子たちが楽しそうに読んでくれていた。

息子が描きためた自由帳漫画は10冊。
年の数だけ描いて旅立ってしまった。
いや、息子は最終回で将来のことも描いていた。
10年後、成人式の時の同窓会。
その中で息子は立派にスーツを着て、皆と笑っている。