波紋が……

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 うなされて起きると右目がぼやけていた。視界のいたるところで、ひっきりなしに波紋が生じているせいだった。
「土砂降りの水面みたいな感じです」
 と訴えたが、眼科医は首を傾げるばかりだった。
「眼球内の房水は毛様体突起から供給され、シュレム管へ排出されます。眼圧は正常で、波紋の要因は見当たらないのです」
「しかし瞼を閉じても、そこが揺らめいているのが分かるほどなんです」
「目を閉じていても?」
 医師は私を凝視しました。
「ではそれは、雨滴による波紋ではありません」
「でも、海中から雨の海面を見上げているみたいなんですよ」
 医師は頷きました。
「まさに、おっしゃる通りです。その波紋は気泡が水面に現れた時に生じる水輪なのです」
「と、おっしゃいますと?」
「あなたの右目の硝子体内部で誰かが溺れかけているのでしょう」

 私は医師から処方箋ではなく、ライフセーバーの連絡先と紹介状を受け取った。
ファンタジー
公開:20/05/21 07:49

新出既出20( 浜松市 )

新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。

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