ホームラン

2
3

「ベンチ入りは以上」
「・・・」
3年間、背番号をもらえなかった。
最後の夏こそはと頑張ったけど。
毎晩、家の前で素振りをした。
こんな日でもいつも通りの僕がいた。
ブン! ブン!
「・・・」
でも、気が入らない。
いつもなら甲子園でホームランを打つイメージをしていたけど。
ブン!
「・・・」
「お疲れ」
後ろから声がした。
「しーちゃん」
振り向くと幼馴染みのしーちゃんがいた。
「ごめん。背番号もらえなかった」
甲子園でのイメージは、しーちゃんの応援でホームランを打てたことにしていた。
「何で謝るの?」
「小さな頃、約束したから。甲子園でホームラン打つって」
「覚えてたんだ」
「・・・」
「頑張ってる姿、いつも見てた。その姿見てるの小さな頃から大好き」
「しーちゃん」
イメージと違うけど、この瞬間でも頑張れる。
「見てて」
「うん!」
大好きな人はイメージではない。
全力でスイングした。
その他
公開:20/05/19 23:52

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