爆発病

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「もうすぐです」
医者は静かにそう言った。
もうすぐとは、もうすぐ爆発するという意味だ。
僕たち家族と医者は大きな扉の前に立っている。
その中の部屋には父が寝ている。
あるときから体調が悪くなった父は、やがて大学病院で爆発病と診断された。
急激に体が衰弱し、死の間際に体が爆発してしまう病気だ。
その爆発は実際の爆弾と同程度の威力を持つ。
だから父は設備が整えられた部屋に一人で寝ているのだ。
「これから死んじゃうっていうのに顔もみられないなんて」
僕は誰に言うでもなく呟いた。
母は扉に背を向けて立ち、時折涙を拭っている。
妹はじっと扉を見つめている。
どれくらいの時間が経っただろうか。
その瞬間は突然訪れた。
ズドン。
防音のはずの部屋の中からかすかに爆発音がした。
その時の気持ちはどんな言葉でも言い表せない。
その他
公開:20/05/19 20:48

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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