指輪ものがたり

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幼い妹の手を引きジミーは貨物列車に飛び乗った。妹のアナは暫くぐずっていたが、やがて疲れ果て眠ってしまった。上着を毛布代わりに掛けてやり、ジミーはがら空きのコンテナから夕日を眺めた。駅に鞄を置き忘れた間抜けのおかげでどうにか食い繋げる。そう考えていた。

─街を覚束ぬ足取りで歩く男は、人生最大最後のチャンスを逃し途方に暮れていた。101回目を数えるプロポーズは、振られるまでもなく自らデートをすっぽかす形でご破算となった。パブに行きしこたま飲んで忘れたかったが、ポケットの小銭はそれには全く足りなかった。

ジミーは戦利品の鞄から財布を抜き取り金を数えた。一週間は持ちそうだった。他に金目の物はないかと探ると、中から綺麗な小箱が出てきた。

その時、唐突に汽車が止まった。小箱はジミーの手を離れ線路に転がり、口の開いた箱から小さなダイヤの指輪が現れた。ジミーはそれを見て、何故か寒気が止まらなかった。
その他
公開:20/05/20 18:56

蛇野鮫弌( ビリヤニがたべたい )

蛇野鮫弌 (はみの こういち)

一日一作を目標に。あくまで目標……

道草食いつつ逝きましょか。

Twitter @haminokouichi

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