かぜむしり

草毟りは勿論知っていた。だが"風毟り”は初耳だったので、先輩に聞いた。

風にそよぐ草原を見ると、グッとくるものがあるだろ？あれは風と草が戯れているんだが、それだけ相性が良いという事でもあるんだ。そして今ではもう、お互いの特長を持ってさえいるくらいだよ。
この襤褸小屋に入れば、それがわかる。ただの隙間風かと思った？でも外は無風だ。これは風が其処此処から生えてるんだ。罅割れから生えた雑草みたいにね。風は草との長い付き合いから"生える”事を学んだんだ。
さ、早く毟って籠に入れよう。初夏の風は伸びるのが早い。
え、さっき毟った雑草が外の籠から消えてる？そうか、やっぱり…。見ろ、緑の塊が宙に浮いてるだろ、草は風との長い付き合いから"流れる”事を学んだんだ。ほら、今にも…。

先輩が指差すと同時に草は散り、風も無い道の真上を勢いよく流れていった。それを見て先輩も僕も感嘆の声をあげた。

まさに青嵐！