飼う夢

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道端に夢が捨てられていた
雨に濡れて凍えていたので上着に包んでうちまでもって帰った
湯船につけて少し経つと湯気のなかに
ぼんやりと浮かんでくる
キラキラ瞬くあたたかい光
澄んだ夜空に綺麗なお月様が顔を出していた
汚れを落として部屋に放つと夢は嬉しそうに走り回る
「今日はいい夢が見れそうだ」
その晩 美しい夢をみた
流れる川には夜空が映り込んで静かに輝いていた
川の辺りに楽器の形をした夢が一つ消え入りそうな光を放っていた
そっと吹き鳴らすと夢は大きくふくらみ夜空に弾けて流れ星になるのだった
たくさんの夢から夢が産まれて
家の中は窮屈になっていた
バターのいい香り
夢がオーブンでクッキーを焼きだした
空気の入れ替えに窓を開けると風が一吹き夢をさらっていった
「まって!!」
追いかけてもつかめない
手からするりと抜けて夢は弾けて消えてしまった

それはそれは美しい夜空で

月がにっこり笑っていた
ファンタジー
公開:20/05/20 08:03

ミルコ

挿絵はコロナで展示ができなかったチビ太さんにご協力して頂きました

ものづくりをしてます

よろしくお願いします
 

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