街の靴磨き

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 碧い地中海が広がるこの街には、不思議なことに靴磨きが多かった。どうして不思議に思えたかというと、この街の男たちの多くはサンダルなので靴磨きなど必要としないし、スーツを着たビジネスマンが多いわけでもない。
 だれが靴磨きを必要とするのだろう。ある日思い切って靴磨きに話しかけてみることにした。墨で真っ黒になった手をした年老いた男は、チャイをすすりながら教えてくれた。
「今は休みなんだよ。お得意さんの学生たちは今は田舎に帰っているけど、じきに忙しくなるよ。学生たちはこの歴史ある街の大学に誇りを持っていて、みんな革靴を履いて勉強している。ときどき埃だらけになった靴をぴかぴかに磨いてあげると、みんな目をきらきらさせて学校に戻っていく。それが私たちにはうれしいことなんだ。」
なるほど、彼らが未来のエリート達の誇りを支えているのだ。
同じく大学の休みを使って旅している私はなんだか恥ずかしくなった。
その他
公開:20/05/19 00:50

taro1( とうきょう )

自然科学の理系。自然と料理と旅と語学と歴史を学ぶことが好きです。
すべて自分で創作して書いていますが、もしも同じようなものが過去にあったらごめんなさい。
ケータイ小説のように段落空けたりするスタイルはあまり好きじゃないので、読みづらいかもしれません。

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