朝の林は宝の山

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時刻は朝の6時。厚い雲が空を覆う。高台から見えるはずの富士山は姿をくらませていた。
早起きしたのに、とんだ期待外れだ。
欠伸をしながら小石を蹴り飛ばして、俺は林道へと戻る。

歩いていて、何気なく視線を巡らせる。ちょっとした違和感があった。右に左に風で揺れる緑の枝葉の中、白く丸い物体がそこにあったから。
猫だ。太い枝に寝そべりながら大きな欠伸をして、気持ちよさそうにしている。
猫って木に登るんだ。漫画でよくある展開なのに、直接見たのは初めてだ。その事実に驚かされる。

不意に強い風が吹いた。

ザワザワ、ザワザワ。
木々がざわめく音がした。

ピヨピヨ、ピヨピヨ。
スズメの鳴き声が返って来た。

他にも、鶯やら雲雀やら、鳩の鳴き声までもが響いて来た。

朝の林って、思ったより騒々しい。
曇り空の下、何気なく流れる朝のひと時に触れられて、自然と笑みが溢れる。
眠気は、既になくなっていた。
その他
公開:20/05/18 21:11

早見並並( 神奈川県 )

物語創作に興味があります。

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