一通の手紙

14
13

「今時、こんなものがまだ存在するのか?」

私は、手紙を受け取ってから三十分余り自問自答を繰り返している。何度となく記された文章を読み返し、立ったり座ったり、意味もなく部屋をうろつくばかりだ。

『これは不幸の手紙です。この手紙と同じ文面を五人に送らなければ、あなたは不幸になります』

仮に、私がこれと同じ文面を五人に送ったとしよう。そうなれば私自身が不幸を媒介してしまうということ……これは立場上マズい。ましてや差出人不明の手紙とはいえ、なにかの拍子に事が明るみに出れば、非難の対象となるのは免れまい。

しかし仮に、私がこの手紙を送らなかった場合、そして万が一本当に不幸になってしまった場合、それは私自身のアイデンティティの崩壊を意味する。そもそもが非科学的というなかれ、こちとらそのような根拠のない出来事は日常茶飯事なのだ。

「ああ、どうすれば……」

福の神の顔は、既に不幸に満ちていた。
その他
公開:20/05/19 15:15
更新:20/05/19 16:52
54字リメイク

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

株式会社ベルモニー Presents ショートショートコンテスト 入選 「とんでかえる」

隕石家族×ショートショートガーデンコラボ 小惑星賞 「詠み人家族」

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容