黒猫の太腿、アイツの二の腕

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太腿を舐められた気がして目が覚めた。午前四時。
彼が姿を消してから八日目。朝が来るのが苦痛だった。このまま日が経てば忘れると言うわけでもない。彼の匂いが残るTシャツを顔に当てて泣く。しょうもないなと思いながらも、泣くしかなかった。
縁があったとして、それはもう終わりを告げたのだ。前向きに捉えようにも想いが成仏しない。この気持ちのまま春を迎えるのか。死んだ方がマシじゃないか。
結婚式をキャンセルしに行く。家を出るとどこからか黒猫がついてくる。猫はにゃあと一声鳴くと私の後をひたすらついてきた。馴れ馴れしいやつだな。
結局帰宅するまでずっと黒猫はついてきた。これだけ好かれたら見放すのもなんだか。家にあげて、スーパーで買ったキャットフード食べさせた。黒猫は丁寧に食べ終わると、私の太腿を舐めた。
二の腕はアイツのだけど。太腿はお前のにする。
黒猫はオスだった。
黒猫は満足そうににゃあと鳴いた。
その他
公開:20/05/19 14:45

夜野 るこ

  夜野 るこ と申します。
(よるの)

皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。

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