たぶん冒険のはじまり

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己が心を偽ることは罪である─。

目の前で突っ伏す男を見ながら、リディはその言葉を思い出していた。
厳格な親の元で育った彼女が散々聞かされてきた言葉。何度も耳にするせいか、その意味を深く考えもせず大人になった。

大陸に蔓延る闇は去り魔王は滅びた。だがその配下であるモンスターの残党は生き延び、その討伐が王国挙げての一大事業となった。リディはその受付け窓口にいた。

彼女はその一日を討伐パーティの登録と、直属上司との不愉快な会話に費やした。
やれ彼氏は結婚は?痩せた太った髪切った?とやたら身辺を嗅ぎ回るような質問を、ずっと笑顔と無難な返答で去なして来たが、ある日彼が臀に触れた時、遂に限界が訪れた。

右フックが見事に上司の顎を捉え、彼はもんどりうって倒れた。

「ああ、やってしまった……私クビだ」

青ざめる彼女に誰かが言った。

「あの……よかったら、我々のパーティに加わりませんか?」
ファンタジー
公開:20/05/18 09:36
更新:20/05/18 09:45

蛇野鮫弌( ビリヤニがたべたい )

蛇野鮫弌 (はみの こういち)

一日一作を目標に。あくまで目標……

道草食いつつ逝きましょか。

Twitter @haminokouichi

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