陽炎、稲妻、見ずの月
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月齢24。スマホで確かめて、顔は上げない。
今夜も降ってるのかな。音も感触もない雨が、街路樹の枝に跳ねるところを想像して、目線はコンクリの上。目の前で欠けてこぼれてく月、もし見えたって痛いだけだ。
『月が欠けるのは、光が雨になるから』
そんなの配置の問題だろ。理屈で説明すれば屁理屈で返す。ムキになって反論しても、結局いい様に転がされた。
『だったら、満ちてく時は何だ』
『降った雨が、蒸発して光になるから』
腹は立つけど、思い出すと面白かった。無茶苦茶でも無意味でも無敵だった。掴めない世界にも手が届く気がした。
陽炎、稲妻、水の月。姿はあっても手に入らないもの。お前がまさにそうだった事を、俺はきっと、未だに認めたくないんだ。
俯いてたら目に入った水溜り、痩せた月が溺れてる。
掬ってもすり抜ける雫に、月の雨はどれくらい溶けてるんだろう。やっぱり考えてしまって、また痛くて腹が立って早足で帰った。
今夜も降ってるのかな。音も感触もない雨が、街路樹の枝に跳ねるところを想像して、目線はコンクリの上。目の前で欠けてこぼれてく月、もし見えたって痛いだけだ。
『月が欠けるのは、光が雨になるから』
そんなの配置の問題だろ。理屈で説明すれば屁理屈で返す。ムキになって反論しても、結局いい様に転がされた。
『だったら、満ちてく時は何だ』
『降った雨が、蒸発して光になるから』
腹は立つけど、思い出すと面白かった。無茶苦茶でも無意味でも無敵だった。掴めない世界にも手が届く気がした。
陽炎、稲妻、水の月。姿はあっても手に入らないもの。お前がまさにそうだった事を、俺はきっと、未だに認めたくないんだ。
俯いてたら目に入った水溜り、痩せた月が溺れてる。
掬ってもすり抜ける雫に、月の雨はどれくらい溶けてるんだろう。やっぱり考えてしまって、また痛くて腹が立って早足で帰った。
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公開:20/05/17 23:59
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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