現実と虚構

0
3

 銀座にあるきれいとはいえない雑居ビルに、トマトとオリーブオイルをたっぷり使った地中海の料理とワインが有名な小さなレストランがあった。レストランは黄色を基調とした内装に、壁に白黒のマグショットの男達が飾られていた。そのオーナーのダビデ氏は、歴史のある地中海の島の出身で、かつてその島のマフィアだったという噂があった。そうしたミステリアスな雰囲気が人気となり、多くの人が料理を楽しんだ。
 ある日、黒のコートをまとったマフィア気取りの政治家がレストランを訪問し、ダビデ氏と友人になりたいと言い始めた。ダビデ氏は少し困ったような顔をしてゆっくりこう答えた。
「この国では暴力団が犯罪組織でもヤクザ映画が賞を取りますが、私の国では自分のことをマフィアなんて決して口外しませんよ。」
 翌週の週刊誌でダビデ氏と政治家の写真が載り、国会で責任追及されたことはいうまでもない。ダビデ氏は現役のマフィアだったのだ。
その他
公開:20/05/17 22:57
更新:20/05/17 22:59

taro1( とうきょう )

自然科学の理系。自然と料理と旅と語学と歴史を学ぶことが好きです。
すべて自分で創作して書いていますが、もしも同じようなものが過去にあったらごめんなさい。
ケータイ小説のように段落空けたりするスタイルはあまり好きじゃないので、読みづらいかもしれません。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容