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「身分制度って知ってるかい?」
「知らなーい」
少女は無邪気に答えた。
「昔はやりたいことがあっても自由にそれができるとは限らなかったんだよ」
少女のぽかんとする表情を見て男は続けた。
「例えばね、戦国大名は戦いに命をかけないといけなかった。でもなかには戦いたくない人もいたはずなんだ。歌や蹴鞠をして死ぬまで過ごしたかった人もいるはずなんだ」
「そっかあ」
少女はなんとなく理解できたような気がした。
そこで先ほどからの疑問をぶつける。
「ところでおじさん誰?」
着物姿の男は微笑むと、手に持った鞠をポーンと空高く蹴りあげた。
少女は思わず首をあげる。
「凄いねえ」
少女がそう言おうと目線を元に戻すと、そこには誰もいなくなっていた。
再び見上げると、落ちてくるはずの鞠も消え去っている。
なぜだか分からないが、少女はこの真っ青な空と男のことは大人になっても覚えているような予感がした。
その他
公開:20/05/18 21:02

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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