四次元の交差点

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 息子を連れて久方ぶりの郷里に帰ると、思い出そのままだった。交差点にある駄菓子屋が懐かしくて入ってみる。息子は珍しい駄菓子に夢中だ。
「いらっしゃい」出てきた女性を見て驚いた。自分が通っていた時の奥さんにそっくりなこと、もしかしたら娘さんなのかと尋ねると、彼女はちょっと困った顔をしてから「私、歳を取らないんです」と言った。
「私にも息子がいました。あの日、小学校から帰ってきた息子は車にはねられました。私は神様に祈りました。どうかもう一度会わせてくださいって。
「四次元って分かりますか? 三次元に時間軸を足して四次元。私はずっとこの店にいて歳を取らない代わりに、好きな日時に行けるんです。元気に学校に行く息子をまた見送ることもできるし、もちろんあの日を何度もやり直したり」
 彼女は少し悲しい目で駄菓子の会計をしてくれる。明日もまた息子を連れてきていいかと聞くと「明日は明日の私ですよ」と答えた。
SF
公開:20/05/18 20:47

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