はるばる先に

骨董市で木彫りの猫を購入した。その日から僕は夢を見る。
『お願いです。私を妻のもとに帰して下さい』
夢の中に現れた猫は僕に遠く異国の地の風景を見せる。それが何日も続いた。
僕は偶然にもその異国の地に見覚えがあった。だからすぐに支度を整えると木彫りの猫を抱え旅に出た。
異国の地に到着した僕は途方に暮れる。どうやって猫の妻を探そう？
猫に聞いてみる。夢の世界じゃあるまいし答えが返ってくる事はなかった。
「スミマセン。ソノ猫、見セテ貰エマセンカ？」
声をかけてきた女性に猫を手渡した。
「ヤット見ツケタ」
聞けばこの猫は夫婦猫と呼ばれる縁起物で彼女の家の家宝だったらしい。その片方が数年前に盗まれ、ずっと探していたという。
僕は彼女の家に招かれ感謝の限りを尽くされた。
「コノ国ハ出会イヲ大切ニシマス」
そう教えてくれた彼女は僕の妻になった。
木彫りの猫に導かれたはるばる先に、僕は運命の人と出会った。