おやつSS・シャルロット

1
2

 ある街に魔術師がいた。
 彼が最も得意とするのは、帽子の中からお菓子を出す魔術。
「1、2、3!」
 ピンクの帽子からは苺のケーキが、黄色い帽子からはレモンのパイが、紫の帽子からはブルーベリーのタルトが現れる。
「なんて不思議! それにこのお菓子の美味しいこと」
 街一番のお金持ちのお嬢様も彼がお気に入りで、何かにつけては家に呼んでいた。

 ある日、政略結婚の決まったお嬢様が言った。
「今までのお礼に、あなたの欲しいものを差し上げます」
 魔術師は、大きな白い帽子をくださいと言った。

 結婚式の宴席、魔術師はその白い帽子から見事なウェディングケーキを出して見せた。
 招待客から歓声が上がる。
 だが、その声はすぐ非難になった。
 ケーキのクリームが塩っぱかったのだ。
 花嫁だけが理由を知っていた。

 魔術師は消えたまま、二度と現れる事はなかった。
 

 

 
 
 
 
 
その他
公開:20/05/17 12:41

堀真潮

朗読依頼等は、お手数ですがこちらまでご連絡ください。
Twitter  @hori_mashio
tamanegitarou1539@gmail.com

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容