どろあそび

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「この色は赤で、これは青。それは黄色」
少年は、道端の泥を集めては、壁に塗りたくって遊んでいた。
彼は、絵を描いてるんだ! と満面の笑みで答える。
まわりの大人たちは、
「ただの泥遊びじゃないか。泥自体にカラフルな色なんてついてない」と笑って、少年の言うことを信じなかった。
ある日その泥遊びに、少女が加わった。お金持ちの家の子で、両親には内緒でやって来ていた。とはいえ服を汚せないため、少年のやることを眺めているだけだった。

ある日の夕暮れ。夕陽の明かりが、街中のあらゆるもの(川の表面や家の窓なんか)に反射して、少年の遊ぶ壁に集まった。するとどうだろう。
光の屈折や、土の粒子の大きさの違いからか、壁一面に色鮮やかな絵が浮かび上がった。
真っ赤な花に瑞々しい草、青い空が、そこにはあった。

一瞬の出来事。この事を知っているのは街の中で少年と少女のふたりだけだった。
ファンタジー
公開:20/05/17 10:08

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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