生き証人

「わしはあの時一人で三十人を相手に戦った！」

また始まった。お爺ちゃんの自慢話だ。機嫌がいいと、戦争をした話を自信満々で語ってくるのだ。

「ひ孫よ！言葉がわかるようになったじゃろう、聞いていけ」

お爺ちゃんの自慢話は、4歳になる娘にも容赦がない。延々と続く戦争話を、娘はぽかんとした顔で聞いている。

「今、あの時共に戦った戦友はどうしておるんじゃろうか・・・」

さてもさても長かった話はようやく終わり、祖父母の家を後にした私たちは疲れ切っていた。帰りの車で、妻に話の説明を求められた。

「説明してなかったっけ。あれはインターネット掲示板で喧嘩した話なんだ。それを戦争だって言い張るんだよ。今でも、パソコンの画面に向かって青二才が！とか言ってる」

聞けば、爺ちゃんのようにネットの喧嘩を武勇伝にする老人は多いそうだ。老人の自慢話がくだらないのは、平和な世である何よりの証拠だと思う。