永久回転木馬

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その回転木馬に乗ったのは間違いだった。怖いので誰も乗らないと噂の回転木馬に俺は勇んで乗ったのだ。恋人にいい格好をしたかったし怖さも体験したかった。
回転木馬には俺ひとり。他の木馬は空っぽで回り始めた。何が怖いのか、期待と不安が入り混じる。柵の外から見ている恋人に手を振った。
どんどん速くなってきた。すごい風圧。と、風とともに虫が何匹も顔に飛んで当たる。イナゴかゴキブリかもっと大きな虫か。群れになってやってくる。俺は顔をそむけずにぐいぐいと前向きのまま。虫が増えてきた。回転はいっそう速い。もう周りが見えない。
虫に包まれて木馬は回る。虫がからだに貼りついては飛び散る。ジャケットが食いちぎられる。次々にちぎられてジャケットが完全に飛んでしまった。虫はシャツにジーンズにと食いつき、ちぎってゆく。シャツもジーンズも散った。もはやパンツ一枚。いつまで回転するんだ。恋人に見られたくないぜ、こんな格好。
その他
公開:20/05/17 08:42

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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