美味しいタイヤ

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「私のかわいい坊やは無事かしら?」
不覚なことに熱を出し、一週間ほど他の場所に隔離されていたパンダのモナは思った。
飼育係に連れられて、いつものパンダ舎に到着すると、一歳になる息子が元気にはしゃいでいるのが見えた。ホッとして話しかけた。
「ご飯はちゃんと食べてた?」
「うん、タイヤおいしかったよ」
「タイヤ?」
遊具用に鎖でぶら下げてあるタイヤを見ると、見事にかじってある。
「この子のお腹にあのゴムが!? 今すぐ吐き出しなさい」
モナが大声で取り乱していると、隣のカバ舎からカバおばさんが顔を出した。
「その子が食べたのはこれよ。タイヤは私がかじったの」
カバおばさんは、小さなタイヤのようなものをパンダ舎に放り込んだ。それは小さなドーナツだった。
「私もここであくびして水浴びして寝るだけで暇だから、ちょっとドーナツの作り方を勉強してたのよね。その坊やが、美味しいと言ってくれてよかった」
ファンタジー
公開:20/05/17 21:59

鳥羽風来

会社員しながら、物語書いています。いつか、文章でお金がもらえるようになりたいなあと思っています。

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