真実味、それは雨

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もう、殻に閉じこもりたい、何もかも投げ出したい。この、社会からいなくなってしまいたい。
男は自分の人生を生きる事をやめた。
喜びも、怒りも、憎しみも、羞恥心も、虚栄心も、全ての感情を捨てた。
「もう、生きていても仕方がない。」つぶやくというよりは、投げかけていた。

彼の人生は明るかった。家庭にも、仕事にも、恵まれ、絶頂だった。
全ての幸せを手に入れていた。
ただ、幸せはお金があれば、いつまでも続くのだという考えが間違えだった。
会社が倒産した。
借金が残った。
家族が離れていった。
友人もいなくなった。
前向きな気持ちになれなかった。
金にものを言わせ、関係性を保ち、そこがなくなり、全てが無くなった。

寒空の下、公園のベンチで、雨に打たれていた。
感情のない、彼にはそれが涙だった。
ふと、思った。自分の心に寄り添ってみた。
オレが死んだら、オレが悲しむよな。
そう、思った。
その他
公開:20/05/17 21:46

ポエマータカノ( 横浜 )

愛を言葉で伝える事が使命だと感じている。
42歳のおじさんです。
カラオケ、料理、笑わすこと、読書、哲学、物思いにふけること大好きです。

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