西洋館の幽霊(17)

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 優介君は感情を押し殺して続ける。
「今日、塾で哲志と拓海が無料体験を終えて来週からは正式に通うって発表があった。あれは立中さんが頼んだの?」
「俺はこれまで通り君の親友でいてくれと頼んだだけだ。そしたら2人に本気で怒られた。俺に言われる事じゃないって。塾を続ける事も前から決めてたみたいだよ。そして2人から逆に頼まれた。『優介を俺達に…野球チームに戻してくれ』って。俺は君が羨ましい」
 優介君は初めて俺の胸で大声をあげて泣いた。
 そして黙って聴いていた島田さんと良行君も泣いていた。
 もう声を押し殺す必要はなかった。みんなで大声を出して泣いたんだ。
 仏壇のお母さんも泣いていた。

 塾の前に、島田さんに哲志君と拓海君のお母さんから電話があった。『優介君のお母さんが生前に野球チームの保護者当番をよく代わってくれた。これから島田さんの当番は私達がするから優介君に野球を続けさせてほしい』と。
ミステリー・推理
公開:20/05/17 13:00
更新:20/05/26 18:01
立中森一(たてなかしんいち) 推理物シリーズ

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
 勉強になりますので、どのようなことでもお気軽にコメントいただけると嬉しいです。厳しいご意見もお待ちしております。
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