西洋館の幽霊(15)

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 2人によると優介君は野球でもキャプテンとして常にチームを優先し自分を犠牲にしてきたようだ。
 それは彼が父と共に幼少期から続けてきた空手の『押忍』「押して忍、自我を抑えて我慢する」の精神が影響を与えていた可能性もある。
 でも、母親を亡くした悲しみはスポーツとは違う。自分だってお母さんが恋しいはずだ。それを弟の為とはいえ、まだ小学生の彼が心配かけまいと野球や空手をやめて大好きな仲間と離れ、家事を手伝い、良行君の面倒をみる。
 そして弟からの手紙に自分がお母さんになり切って、弟の為だけの言葉を紡ぐ事がどれだけ辛かったか。ついに心が悲鳴をあげたのだろう。
 強いと信じる父が妻を亡くした悲しみを支えている自分でもない先生、母親以外の女性に相談する事も嫌だったのかもしれない。
 今夜は島田さんの家に泊まる。
(お母さん。良行君や優しい幽霊達の想いは届きましたか。どうか優介君に力を貸してください)
ミステリー・推理
公開:20/05/17 11:00
更新:20/06/07 00:01
立中森一(たてなかしんいち) 推理物シリーズ

NORIHISA( 碧の星 )

   創作活動はこちらのショートショートガーデンが初めてです。令和元年12月31日から投稿開始しております。
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