私の雨

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 最近、雨ばかりで嫌になる。髪の毛だって決まらないし、メイクのノリも悪い。梅雨だし、仕方がないのかも。

 そんな日々にも、嬉しい出来事は用意されていて。小さな幸せを重ねることに余念のない私は、雨に閉ざされた日常を満喫していたりする。

 隣を歩く背高な先輩に傘を高く掲げる。先輩は横着な人で傘を持ってくれたことがない。そもそも自分で傘を持ってこない。私はそれが嬉しくて堪らない。だって私が当たり前に期待されているみたいじゃない。外は雨、傘の下はふたりきりの世界。

 うん。悪くないんじゃないか。決まらない髪型も、乗り切らないメイクも許してあげる。

 私は先輩を見上げて話しかける。雨の日にする、雨の話題。
「先輩、知ってますか?雨の日には幽霊が見えやすいんですって」

 街中を往く私を小さな子供が指さして笑う。
「雨降ってないのに」
 変な子。もうずっと、私の世界は雨が続いているというのに。
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公開:20/05/16 14:07

直見逸

なおみ いつる、です。
ツイッターでは「瀬々幾」と名乗っています。
一日一本を目安に書いていきます。普段は長編とか色々書いています。

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