父のユウレイ

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 父親が亡くなり数日したころ母親から息子に電話が来た。父親のユウレイが出るのだという。ユウレイは毎夜、自分で使っていた机の前に立って机の上を撫でていると。母親は怖がって息子に助けを求めたのだ。
 息子は実家を訪れて父のユウレイが撫でているという机を調べた。すると引き出しの一番奥にこれから抽選の宝くじが一束入っていた。
 若いころ、賭け事にのめり込んで大きな借金をし、返済を親に泣きついて、親も裕福なわけでは無く、とにかく必死に息子の借金を数年かけて返済した。そんなことがあって、父親は深く反省し、それ以来、賭け事を一切しないと自ら誓い、生涯貫いた。その父親が実は密かな楽しみとして、長い間、宝くじを買っていて、その収支などの記録を日記に付けていたというのは、家族にとって、少し微笑ましい、感慨深いことだった。
 抽選結果が心残りだったのだろう、父親のユウレイはこの日以来出なくなった。
ファンタジー
公開:20/05/16 13:12
更新:20/05/16 21:23

N(えぬ)( 横浜市 )

読んでいただきありがとうございます。(・ω・)/
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