はるばる先に

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世界中を旅してきた友人が帰ってきた。
「そろそろ俺も腰を据えて仕事をしようと思う」
そう言って始めた店は本屋だった。
今のご時世、本なんて通販で簡単に買えるだろう。何故本屋なんだ?
「俺の店で扱う本は旅先で見つけてきた珍しい本だ。通販なんかじゃ絶対に買えない代物ばかりだぜ?」
面白い。私は開店祝いに友人の店に行く事にした。
友人は何を思ったのか険しい山の上に店を建てた。
装備を整え、ガイドを雇い、店を訪れた。
なぁ、何でこんなところに店を建てたんだ?
「ここにある本は世界中から苦労して集めたものばかりだ。それを簡単に手に入れられると面白くない。だから苦労した先、はるばる先に辿り着いた者にしか売らないと決めているんだ」
まったく、ひねくれたその性格だけは変わっていないな。
とはいえ友人の店にはその確かな目利き能力で得た希少な本ばかりが揃っている。
その本棚の一角に私の書いた小説も並んでいた。
公開:20/05/16 18:47

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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