ラーメンたべたい

10
13

居酒屋で同僚と呑んだ帰り、一軒のラーメン屋を見つけた。ちょうど小腹が空いていたこともあって、ふらふらと暖簾をくぐる。

「ラーメンひとつ」

店主は「あいよ」と返事し、のそのそ準備を始めた。

「お待ちどう」

思いのほか早く出てきた。早速、湯気の立った細麺をすする。

……あ、旨い。

麺の喉越しもさることながら、コクのある深い味わいのスープも絶品。思わず一気に食してしまった。……まだ入りそうだ。

「替玉、お願いします」
「……硬さは?」
「硬めで」

気づけばそんなやり取りをしていた。

「へい、替玉お待ち」

店主の声に顔を上げると……厨房の奥から自分そっくりの男が現れた。

「夜分恐れ入ります。私が替玉です」

……確かに硬めだ。七三分けだし。

「いや、何かの冗談?替玉っていうのは麺……」

言いかけて、急に視界が暗くなる。

あのスープの深い味わいの秘密が、わかった気がした。
ホラー
公開:20/05/15 19:55
更新:20/05/15 20:00
54字リメイク

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

株式会社ベルモニー Presents ショートショートコンテスト 入選 「とんでかえる」

隕石家族×ショートショートガーデンコラボ 小惑星賞 「詠み人家族」

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容