指名された男

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当たるな、当たるな。……当たってしまった。

俺の願いは届かなかった。

普段ならこんなことは考えないのだが、今回はそうするわけにはいかない。目立つと狙われてしまう。

だから俺は目立たぬように息を潜めた。存在を気取られぬように、細心の注意をはかった。大きな音をたてないように動きは最小限に努めた。

しかしそれが逆に目立つと考え、周りと同じような行動をとることにした。

しかしその努力は一瞬で無駄になった。
「じゃあお前」
俺は数学担任に指名されてしまったのだ。

いつもなら得意げに黒板前に立つ俺は、苦手な幾何の問題をクラスメイトに向けて説明することになったのだ。

「当たってしまった」 

俺の願いは届かなかった。
その他
公開:20/05/16 20:00
更新:20/05/16 12:31

僕に才能はない( 東海地方 )

休学したりしてまだ大学生。作家になりたいと考えています。そのためにもコメント沢山お願いします!見るに耐えれるものになるはずです。
ジャンルはなんでも屋です。

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