噂　～５年１組・春樹～

僕は噂なんてものが大嫌いだ。それの殆どは嘘なのに、何故か皆それを信じてしまう。非常にくだらない。
「春樹、知ってるか？夜の学校で幽霊が出たんだって」
秋人は僕を驚かそうとする。それで？
「その幽霊を見た奴は、幽霊に連れて行かれるんだ！」
その時点でおかしい。それでは噂の発生源が消えるではないか。それに行方不明者が出たら今頃学校は大騒ぎだ。
「それがさ、魔法の呪文を唱えると幽霊が消えて助かるらしいんだ」
まったく以てくだらない。そんな噂話に花を咲かせるくらいなら勉強したほうがマシだ。
そう答えた僕を秋人は夜の校舎に呼び出した。幽霊を見るんだそうだ。
「おい…あれ見ろよ」
秋人が指さす先、本当に幽霊がいた。そいつは僕達に気付くとニィッと笑って近づいてくる。
秋人は怯えながらも魔法の呪文を唱えた。だが幽霊の足は止まらない。
ああ…そっちの噂は嘘だったんだ。
やっぱり、噂なんて信じるもんじゃない…