はるばる先に

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仕事帰り、私は食堂に寄ると遥々先にを持ち帰りで注文した。
今日は妻の命日。家で遥々先にを食べながら妻との思い出に浸るとしよう。
遥々先にが出来るまでの間、食堂にいる客を観察した。
遠距離恋愛中らしいカップルは遥々先にを食べて笑い合っている。私と妻もそんな時代があった。
私と同年代の男性は遥々先にを食べて首を傾げている。想い人が近くにいる証拠だ。もっと周りを見たほうがいい。
遥々先にが出来たようだ。私も帰るとしよう。

仏壇の前で遥々先にを食べ始める。
ん?昨日まで薄かった味が濃くなっている気がする?
病院の薬はもう飲んでいない。私ももうすぐ妻の所に行くはずなんだが…
「もっと健康に気を付けなきゃだめよ」
いつの間にか後ろに娘が立っていた。
「せめて父さんにだけは親孝行したいんだからもっと長生きしてよね」
私を心配する娘に気付かされた。妻よ、すまん。遥々先に行くのはもう少し後になりそうだ。
公開:20/05/14 18:46

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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