能動的3分間

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現代社会の労働者は忙しい。
何と戦うかといえば、時間だ。とにかく時間がない。気づけば一日が終わっている。カップラーメンができる3分間に何ができるかが勝負だ。
地球の平和を守るヒーローも忙しい。故郷から遠く離れた地球で呼吸が持つのは3分間。怪獣をどこまで追いつめられるかにプロの技が光る。
文明の命運を握った主人公も忙しい。悪役から与えられた3分間で、降伏か、決闘か、どちらを選んでも修羅の道の決断をする。しかし、主人公としての意地がある。確実に、その3分間で正しい選択肢を選ぶ。

だが、私もまた忙しい。猶予は3分だ。洗い物をしている母親にミルクをもらうのに、遊んでもらいたい父親に気づいてもらうのに3分を超えては赤子協会の恥だ。必死に泣く。2分46秒。危なかった。隣の家の子は、この前2分を切ったという。おっと、父親が帰ってきた。笑顔でアピールをする。社会を生き抜く準備はもう、始まっているのだ。
SF
公開:20/05/15 11:20

えふちゃん( にほん )

えふちゃんといいます。
高校の時から書きためていたショートショートをあげていければな…と思います。

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